皆様いかがお過ごしでしょうか。
ラフ・アンド・タフ行政書士事務所の横坂です。
第51回衆議院選挙が公示されまして世の中は選挙ムードに染まっています。この中で一部の政党が特定の宗教の影響を強く受けているのではないかという批判がSNSを中心に指摘されています。「特定の宗教を支持母体に持つ政党は政教分離の原則に反するのではないか」「政党が宗教法人あるいは宗教団体から献金を受け取るのは政教分離の原則に反するのではないか」といったものです。
今回はこのことについて、ざっくりと解説してみたいと思います。
しっかりと解説したら分厚い本が何冊も書けてしまうほどの問題ですから、あくまでもざっくりとした解説であることはご了承ください。
・政教分離原則ってどういうこと?
さて政教分離原則というのは文字通り読めば「政治と宗教は分離していなければならない」ということですが、これは日本では憲法第20条と89条に規定されています。
第20条
一 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。三 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
ここから読み取れることは簡単に言えば「政治の側は宗教に関わってはいけないけれども、宗教の側が政治に関わることは構わない」ということです。少しだけ難しくいえば「国が特定の宗教に対して利益あるいは不利益を与えてはならない」というのが政教分離原則の肝です。
もし、宗教の側が政治に関わってはいけないのだとすれば極端な話、お坊さんも神主さんも牧師さんも神父さんも選挙に投票することができないことになってしまいます。また憲法には結社の自由も規定されていますから、お寺の檀家さんや神社の氏子さんや教会の信徒さんが集まって政治的活動をする、ひいては政党を作ることも何ら問題ありません。「宗教を信じている人は政党を作ってはいけない」なんてことを言ったら、その方が明らかに憲法違反だということになります。
ですから、ある政党がある宗教団体を支持母体とすることや、ある政党がある宗教団体から献金を受け取ったり選挙協力を得たりすること自体は、政教分離原則に違反しないということです。
しかしたとえば、それらの政党が選挙で多数を得たり、多数を得た政党と連立したりして政権を得た時に、行政権や立法権を用いて支持母体であったり、献金を受けたり、選挙協力を得たりした宗教団体に利益を与えたり、または特定の宗教団体に不利益を与えたりすれば、これは政教分離原則に違反します。
・もう具体名をあげちゃいます
・・・えい!もうまどろっこしいので、具体名を挙げて説明してしまいましょう。その方がわかりやすいですし、この記事を読むくらい政教分離に興味のある方は皆さんすでにご存知のことでしょうから。
公明党(今は中道改革連合になったりもしていますが、ややこしいのでここでは公明党と呼びます)の支持母体が創価学会であることに問題はありません。ただし公明党が行政権や立法権を行使して「創価学会を国教とするぞ!」とか「創価学会に有利な法律を作るぞ!」とか「創価学会にお金を出すぞ!」なんてことをしたら政教分離原則違反、つまり憲法違反になります。
自民党が旧統一教会から選挙協力や資金を得ていたのではないかという問題も、政教分離原則という一点からみれば、旧統一教会が自民党に選挙協力や資金の提供をすること、自民党がそれを受けること自体に問題はありません。ただし自民党がその見返りとして政権与党として旧統一教会に便宜を図ったのであれば政教分離原則違反、つまり憲法違反になります。
公明党と自民党以外にも、実は他にも宗教団体の支援を受けている政党はありますし創価学会や旧統一教会以外にも多くの教団あるいはその連合体が政治活動をしています。その中には実は創価学会や旧統一教会よりもはるかに力の強い団体だっていくつもあります。しかしそうであれ、それ自体には何の問題もありません。人は誰でも信教の自由によってどの宗教を信じてもいいし、宗教を信じた人が政治活動をすることもまた自由だからです。
ですから悪名高い旧統一教会であっても、教団自体やその信徒さんたちが政治活動をすることには何の問題もありません。政党が支持者から資金や協力を得ることはルールの範囲であればこれも問題ありません。ですから「自民党は旧統一教会から資金や協力を得ていたではないか!」という問題提起をしても、最終的には「得ていましたけど、それが何か問題ですか?」という返答をされて終わりです。問題はその見返りとして行政権や立法権を行使して教団に利益を与えたか否かです。その点を明確な根拠をもって指摘すれば逃げ道のない追求になることかと思います。
・靖国参拝問題はどうなの?
話は変わりますが、靖国神社参拝もよく政教分離原則違反ではないかと指摘されます。憲法は国や地方自治体もしくはその機関が宗教活動をすることは禁じていますが、それに属する個人が宗教活動をすることは禁じていません。たとえば石破前首相はプロテスタントのクリスチャンですが、首相在任中に教会の礼拝に出席したりしています。これは石破首相個人の宗教活動である限り問題ありません。しかしたとえば内閣総理大臣の公務として礼拝に出席するとなると、これは「国もしくはその機関」が宗教活動をしたことになるので政教分離原則違反になります。靖国神社の参拝もこれと同じことです。首相であっても閣僚であっても誰であっても、個人的に神社に参拝することは自由です。しかしこれが公務として行われれば問題になります。まして公金から玉串料などのお金を払ったとなればなおさらです。石破さんが個人のお金を教会に寄付するのは自由ですが、公金を寄付したら問題なのと同じです。
・まとめ
ざっくりと言いながら少し長くなってしまいましたが、本当にざっくりと要約すれば「政治が宗教に利益や不利益を与えるのはNG!宗教が政治に利益や不利益を与えるのはOK!」ということなんです。納得できないという方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも現在の憲法の主流の解釈や裁判所の判例はそのように判断しているんです。
政治と宗教の関係については古代から様々な議論がされています。そして現在でも国によってその関係は様々です。それらについてはまたいずれ、機会があればお話ししたいと思います。
それではまたいずれ。
どうか良き日をお過ごしください。